時間効率を上げるべく、大学生が【イシューから始めよ】読んでみた④
本記事は、前回の続きとなります。
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前回までの段階で、イシューを分解してストーリーラインに落とし込むところまで行きました。
今回は仮説ドリブンの後半である、絵コンテ作りについて説明していきます。
絵コンテとは何か(定義)
著者らはストーリーラインを組み立てた後に、次なるステップとして絵コンテ作りを上げている。
この絵コンテとは、ストーリーラインを裏付けるファクトを設計するものである。
具体的には、サブイシューごとにその検証には、どの様なデータが必要なのかを設計していく手段のことを指示している。
これによって、論理構成のみであったものに仮想的なデータが加わり、アウトプットのイメージが急速にわいてくる。
ここで一つ、自分の理解を促すために具体的な例を挙げたい。
例えば、大学のテストを楽に乗り切るためには、友人から過去問を貰うことに時間を費やしたほうが、普通に勉強するよりもROIが高い、というイシューがあったとして、これに伴う必要なデータを逆算していく。
この例だと、テストにおける過去出題問題の割合や、教授が過去3年にわたって問題を回収している率や、テストで90点取るための勉強時間を用意できればいいだろう。
といったように、【どのようなデータが欲しいのか】を逆算することで、絵コンテを作成していく。
絵コンテ作りの3Steps
Step1: 軸を整理する
分析の本質とは何か
絵コンテとは、要は分析手法をあらかじめ設計しておくことなのだが、その根底となる分析の手法について、述べていきたい。
良い分析とは、【比較して比べること】であると著者は述べている。
例えば、彼は得点を取ることにたけているというよりも、彼は昨年の得点王に比べて15得点多い数字をマークしており、得点力が高い、と表現したほうが、そのデータの意図するものが伝わりやすい。
また、それに加えて重要となるのが、何と何を比較対象とするかだ。
2つの軸を適切に設計することで、そのデータが支えたいサブイシューを明確に伝えることが出来る。
次説では、その分析の軸設計の方法について述べていきたい。
定量分析の3つの型
良い分析とは、比較し手比べることであると述べたが、その方法には大きく3つある。
・比較
・構成
・変化
の3つだ。
比較とは、上記の通り、AとBを比べることである。
構成とは、全体に対する割合を示すことで、市場シェアや組成生成物比などが例に上がる。
変化とは、横軸に対する縦軸の変化を示すものだ。具体的には、コロナ感染者数の日時変化や、濃度変化に対する伝導性なども挙げられるだろう。
分析は上記の3つにカテゴライズできるとしても、その表現方法は多様である。
エクセルのグラフテンプレートが3つを優に超えていることからも言えるし、上記の3種類をそれぞれ組み合わせて、3*3で9通りが少なくとも存在しているだろう。
軸設計の基本
分析をするにあたり、縦軸と横軸を決めなければいけないわけだが、それにはセオリーがある。
横軸は原因で、縦軸は結果にすることだ。
例えば、睡眠時間とIQの相関を調べたいとすれば、睡眠時間を横に、IQを縦にすることができる。
この様な軸設計は、ボトムアップ的に考えていくことが可能だ。
例えば、週に一回、自転車に乗る人の多くは健康であるというときは、自転車に乗る場面をたくさん出してみて、それらのうち、似ているものをグルーピングしていけばいい。
・本屋に行くとき
・通学
・遊びに行くとき
・サイクリングをするとき
という風に出していき、
・プライベート(娯楽の移動手段、サイクリング、)
・オフィシャル(通学, 通勤)
という風に抽象化したのちに、
それらの全体に占める構成比と、それらの平均乗車時間との健康診断の結果との相関が見られれば、自転車に乗る人の多くが健康であることが示せるだろう。
これは、厳密には自転車を乗ることで健康効果があるわけではない。
例が長くなったが、要はボトムアップ的に軸を出せるということだ。
Step2: イメージを具現化する
分析の軸を出して終わりではない。
次にするべきことは、その数字をイメージすることだ。
規模感をイメージ
グラフから得られるであろう、データの目安をイメージすることが大事だ。
忘れられがちだが、数字は細かく取ればいいというものではない。
大雑把で良いところは適当にとり、重要なところは細かく取る。
例えば、塩化水素と水酸化ナトリウムの酸塩基滴定をしているとして、pHが2~4のところなど、どうせ平坦なグラフが出るのだから、適当にとればいい。逆に中和店の理論値では、非常に細かくデータを取る。
この様なイメージが出来ていれば、データを集めすぎることなく、効率的にリサーチを進めることが出来る。
もう一つの例を挙げるとすれば、都道府県当たりの平均年収を見る際に、1万円単位で比べる必要はない。これらは、軸を設計した時点で50~100万円程度差が存在していると仮定しているからだ。
意味合いを表現する
もう一つ、数字の規模感に加えて、グラフの形をイメージする必要がある。
具体的には、仮説を肯定するデータはどのようなものなのか、である。
これをイメージすることで、仮説なきリサーチを避け、なぜこのリサーチを行うのかが明確になる。
例えば、世帯年収と学歴の相関を見るときに、右肩上がりのグラフになることをイメージすることは必須だ。
これによって、なぜ平均年収を取るのか明確になるし、分析していて訳が分からなくなることもなくなる。
Step3: 方法を明示する
軸を決めた、得られるデータのイメージもついている。
しかし、実際の分析手法がなければどうしようもない。
ニホニウムが錯体形成に非常に有用である。得られるデータは、他の金属触媒に対する、カップリング収率を見れば、大きなものを示すだろう。
という絵コンテを作っても、ニホニウムを実際に単離し、反応系に組み込むことは出来ない。少なくとも現実世界では、実験が出来ないのだ。
この様な事例に後で気づかないためにも、あらかじめ分析の手法をイメージする。
例えば子の例であれば、計算化学の力を借りることで、サブイシューを実証することが出来るかもしれない。
この様に、あらかじめ分析の手法を決め打つことが大事である。
とはいえ、これらの分析手法は自分のイメージ、言い換えると熟練度の中に絞られる。
優れた問題解決手法をもっていれば、どの分野でも早く一流になれるわけではない。そのためには、業界の基礎的な知識を習得しなければならないからだ。
僕がいきなり、物流業界における新規ビジネスを考えろといわれても、知識がないので、どの様なデータが得られるのか分からない。
これは、非エンジニアでもデータサイエンスを学ぶ人が増えている理由の一つでもあると考えられる。具体的には、データサイエンスで何が分かるのかを知らないまま、AIを導入して業績を上げようなど、不可能だからである。(と思う)
以上が仮説ドリブンの後半である、絵コンテ作りについてだ。
この章と前章で、イシューを定めたのちの分解作業について述べた。
次章では、アウトプットドリブンの考え方をまとめていきたい。
長文をお読みいただき、ありがとうございました。
以下は、これまでの過去記事です。
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